「ほとんど整数」という概念-「ほとんど」何とか(1)
はじめに
皆さんは「ほとんど百合」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?その名の通り、ほとんど百合に近いのだけれども、微妙なすれ違いや思い違いで完全な恋人ではなくて百合でもないものです。
なぜ、これが興味深いのかというと、一見しただけでは、通常の作品から「ほとんど百合」に該当する二人が登場するからなのです。
それがどうした、という風に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが興味深いと思われる人は引き続きこの記事を読んで見て下さい。
やりたい放題書いてみる。
突然ですが百合って良いですよね。
でも百合って言っても一口で表せないほどに細分化されていて…
人によっては百合であったりなかったり、そんな奥深さを秘めているのです。
今回はそんな百合の神秘に迫るアニメの紹介です!!
「ようこそ、カフェ・リーベ女学園へ!」
ここは架空のお嬢様学校。店員同士が姉妹シュヴェスターとなり、清らかに美しく給仕をするサロン。
日頃より誰からも愛されるような振る舞いを心がけている陽芽は、とあるきっかけでリーベ女学園の生徒として給仕をすることに。
そこで出会った女生徒・綾小路美月を何気なく「お姉さま」と呼んでしまい…?
演技ソトヅラと本音が咲き乱れる、お給仕生活はじまります!
今回紹介する「私の百合はお仕事です!」は30分枠の『百合アニメーション』作品だ。
百合と言えばコミック百合姫とまで言えるほどの雑誌・漫画作品が原作のアニメ化作品で、あらすじにもある通りリーベ女学園というお嬢様学校を模したコンセプトカフェで働く女の子達の間で繰り広げられる恋愛模様を描いた作品となっている。
最初は主人公である白木 陽芽(ひめ)ちゃんが、まったくこのカフェ・リーベ女学園とは無縁の存在であったところから物語は始まる。彼女はクラスや同級生から一目置かれる「優しくて人当たりの良い」女子高生だっただが、それは彼女が誰からでも良く見られたいという願望を実現するための『外面』だけを見た評価だった。外面が外れると割と適当な性格で自分が認めた存在以外とは親しくせず、距離を保っていた。
この時点ではその『認めた存在として』矢野 美月(みつき)ちゃんが親しくしていて「大事な友達」として常に仲良くしてきた。みつきちゃんはひめちゃんへの好意を隠しきれないほどに寄せているがひめちゃんはあくまでみつきちゃんを「大事な友達」として扱っているので二人の関係は百合というか友情というかその間で揺れ動くものというか、暗闇で蝋燭に灯された光の様なもので常に揺らいでいて儚いもので大変素晴らしいものだった。
物語の冒頭でひめちゃんは街角でカフェ・リーベ女学園の店長のまいさんとぶつかって怪我をさせてしまい、一時的に店を手伝うことになり彼女はカフェの設定である「リーベ女学園」で百合を演じる世界に飛び込みそして流れでそのまま店で働くだけでなく店で出会った矢野 美月(みつき)ちゃんと出会い、彼女を「お姉さま」と呼んで彼女と姉妹の契りを結ぶことになる。
この段階ではまさに『ビジネス百合』とでも言ったところだろうか。これも百合…なのだがこの段階ではこれを百合として良いのか釈然としないものとなっている。
だがこの二人、それだけではなかった。出会った当時のひめちゃんは気付いていなかったが彼女とみつきちゃんの間には過去からの確執があった。そしてそれが明らかになった上で誤解?が解けて仲直りというかむしろそれ以上に打ち解け合って「大事な友達」以上の「親友以上恋人未満」のような関係に発展する。
彼女たちがビジネス百合関係だった頃には「外面」も姉妹の関係も嘘だらけでむしろお互いに相手を悪い方向ではあるが意識しあっている、ある意味で「むしろ百合?」な関係だっただけにその温度差の変化とそれによる化学反応はとてつもないものだった。
一方その頃「大事な友達」だったみつきちゃんはヤンデレ化していく。その光景もまた新たな百合の形だと言えよう。
そして今度はそんなみつきちゃんを気にかけるカフェの同僚の知花 純加(すみか)ちゃんがそんなヤンデレ化するゆつきちゃんと恋愛の末に居場所であるカフェの人間関係が壊れてしまう事を心配して声をかける事になり、その心配が心配以上の気持ちに発展することによってすみかちゃんはゆつきちゃんに対して特別に思いやる気持ちを、そしてゆつきちゃんはヤンデレ化するほどにひめちゃんが「唯一」の大切な相手だったのにすみかちゃんに対しても心を寄せて行く。
もういったいどうなってしまったのだろうか。ありとあらゆる場所で百合の光が明滅している。本作はまさに百合の宇宙空間なのだ。百合の星が生み出されて輝いては消えて、また光り輝いて行く。
そして同時に本作は哲学的な問いを問いかけてくる。「いったいなにが百合で百合でないのか」と。「ビジネス百合は?ただの友情と百合の境界は?」など本作は常に私を揺さぶり続けてきた。こうして百合は揺らいで行く。そして百合という概念はより洗練されたなにかに変化して行くのだろう。
リーベ女学園を通して、彼女たちの絡み合う想いと思惑とすれ違い。そんなものを垣間見ることが出来る本作をぜひともご覧あれ。
それではごきげんよう。
お菓子は好きですか?お菓子ってついつい食べすぎてしまいますよね。
でも、小さな頃を思い返してみるとお菓子に対するワクワク感のようなものはあまり感じなくなった気がします。
今回は菓子職人が異世界に転生して「お菓子のために」成り上がるアニメの紹介です!!
貧乏領地・モルテールン領の次期領主として期待される少年・ペイストリー。
幼くして類まれな才能を発揮する彼の前世は、将来を約束された天才菓子職人だった!!
「お菓子で笑顔を作ってみせる」
変わらぬ決意を胸に、転生した世界でもお菓子作りに励むペイストリー。
だが、若き少年に数々の苦難と試練が降りかかる。
領地を襲撃する盗賊に、一癖も二癖もある腹黒貴族たち、
さびしい懐事情に、水も乏しく枯れ果てた土地と前途多難......。
立ち向かう武器は、持ち前の知略とお菓子作りへの愛情。
果たして、ペイストリーは幸せ溢れる領地を作れるのか!?
甘くておかしな王道スイーツ・ファンタジー開演!
今回紹介する「おかしな転生」は30分枠の異世界転生ファンタジー作品だ。
原作は「小説家になろう」からで所謂、なろう系のジャンルに属する作品で例に漏れず辺境の領主の息子として転生した主人公のペイストリーが転生前からの知識とお菓子作りの知識と腕前を活かして?有力貴族とつながりを持ったり、幾度にもわたる戦いで容赦なく敵を打倒したりして所属する国の王族からも認められ、ついには有力貴族のご令嬢と婚約もして成功人生まっしぐらの道を歩んで行くという大筋となっている。
なろう系というと主人公の「俺、なにかやっちゃいました?」に視聴者が総ツッコミするような展開になるのがお約束だが本作ではその心配をする必要はないだろう。主人公の「ペイス」に対してはその父親「カセロール」と従士長「シイツ」が目を光らせていて視聴者がツッコミを入れるよりも早く彼らがツッコミを入れてくれる。
それに加えて本作では主人公が転生前の知識や魔法で騒動やチート能力を発揮することもあるものの、生前からの本人の気質や聡明さや転生後に習得した技術が光る場面も多く、チート能力全開!!という作品にはなっていない。
主題にも含まれるお菓子が物語の鍵となることもあるものの、貴族関係の駆け引きや戦闘や領地経営などの要素が多い本作では主人公の行く末だけでなく、ペイストリーの生まれた「モルテールン領」の発展を楽しむことも出来るのが見どころのひとつとなるのではないだろうか。
また、ヒロインの「リコリス」ちゃんも大変可愛らしく魅力的だ。すこし内気ながらも他人の機微に敏感な彼女は個人的にどストライクで実に主人公がうらやましい物語に華を添えてくれる。
彼女に出会うまで主人公のペイスはお菓子がすべての行動の動機となるほどに菓子狂いな傾向があったが出会ってからは彼女の幸せも同列に重要になるほどには彼女を大切にするようになった。
そりゃそうだよなぁ??
タイトルには「おかしな」ということでお菓子と可笑しいをかけたような印象をもつかもしれないが本作を最後まで視聴してみて、ギャグやとんでも設定などという要素は特に見受けられなかった。そもそも異世界転生やチート能力などが「おかしい」の範囲に入るかもしれないがそういった作品を見すぎてしまったためにそういった常識的な感性が失われてしまっているのかもしれない。
とにかく、物語全体として領地経営や貴族の駆け引きなど、なろう系にしては少し真面目?な要素を保ちつつもしっかりと前世の知識やチート能力である固有魔法も含めて「やらかしていく」主人公の行く末をその目で確かめられてみては如何だろうか。
皆さんはお元気ですか?健康ですか?
風邪を引いたり、怪我をしたりさまざまな場面でお世話になる薬。
その大半は大きく人類の歴史で見ればかなり後になってから急速に発達したものです。
今では当たり前にある薬の知識を持つ現代の薬学者がそれを持たない中世レベルの異世界に転生したらどうなるか、そんなアニメの紹介です!!
現代日本の薬学研究者であった薬谷 完治は
目を覚ますと、宮廷薬師の名家ド・メディシス家の息子、
ファルマ・ド・メディシスとして転生していた。
ファルマは間違った治療法や薬の調合、
医療行為と呼べない呪術やまじないが横行するこの世界の医療に絶望する。
前世で培った現代薬学に加え、
異世界で手に入れたチート能力【物質創造&物質消去】、
貴族だけが使える【神術】を駆使し、あらゆる疾病に立ち向かう。
そして、真に効果のある薬を広く人々に届けるべく『異世界薬局』を開業する……。
異世界チート×現代薬学!異世界の医療を変える人助けファンタジー、本日開業!
今回紹介する「異世界薬局」は30分枠のなろう系の異世界転生ファンタジー作品だ。
原作は小説家になろうで、異世界転生モノということだが、少し変わっているところとして既に存在しているある貴族の息子に「成り代わる」形で転生を遂げている事が挙げられる。
基本的にはある時点で「前世の記憶を取り戻した」や「転移した」や新しく「世界に生み出された」存在であるなかでは本作は少し変わった要素を持っていると言える。すこし踏み込んだ話をすると、原作(なろう小説)の終盤にその設定が活きてくる(所謂フラグ回収)場面もある。
それはアニメ作中にも影響を与えていて、第一話から第二話くらいまでは主人公のファルマ(薬谷)が転生先でファルマとして振る舞うために苦労する様が描かれている。そしてその後も本人の意志とは別に周囲から神格化されたりと苦労は絶えないようだ。
主人公の側にいるヒロイン的な立ち位置なのはファルマ専属のメイドである「シャルロット・ソレル」とファルマの父親であるブリュノの弟子で家庭教師だった「エレオノール・ボヌフォア」の二人がいるのだが、転生後の年齢で言うなら歳も近く、愛嬌もあって明るいシャルちゃんがメインヒロイン候補なのだが、転生後も「薬谷」としての自我を割りと保った状態で物語が進むので恋愛的な意味ではエレオノールさんの方がより親しい関係になっていて、シャルちゃんはどちらかというとマスコット的な立ち位置に収まっている。
お姉さんキャラも元気な(ロリ)キャラもどっちも良いよね。
概ねのストーリー展開としては、主人公が転生後に中世レベルの医療水準では不治や原因不明のの病に現代医学・薬学の知識と転生時に授かったチート能力を駆使してそれらに立ち向かう内容となっている。アニメ版のJIN-仁-みたいなものだろうか。
原作のうち途中までの描写ではあるがきりの良いところで区切られていて(おそらくシンプルで初見でも楽しめるところを意図的にピックアップして描いている)、アニメだけで見てもそれなりに見れる展開であると思うが、前述したような他のなろう系アニメとの微細な差を意識しなければ量産型のなろう系の域を出ない上に、主人公の微妙な立ち位置がなろう系の持ち味をマイルドにしてしまっているため、物足りなく感じる人も居るだろう。
なろう系好きの人にはそんな味変要素も含めてぜひともその目で確かめてみることをおすすめしたい。