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2019年3月30日土曜日

主は語りかけられた。アニメを見るのだと。

不十分な予算、厳しいスケジュール…
クソアニメが生まれる要因は世の中に沢山溢れていてそれらの困難を打ち破る猛者もいればそうでない者たちもいる。
数多くのアニメが生まれてはクソアニメハンターたちに狩られていく…
そんななか、潤沢な予算はあったろうに、原作の人気はあったろうに謎の超展開を連発しこれでもかとばかりに視聴者を置き去りにして行くぶっ飛んだアニメを紹介します。


百年戦争に終止符を打ったのは、二人の口づけだったー!?
史実に基づいたジャンヌ・ダルクのもう一つの物語が今始まる…
貴族の息子でありながら魔術や錬金術の研究に没頭する少年 モンモランシは、
パリの王立騎士養成学校でブルターニュ公の妹 リッシュモンら、
多くの騎士・姫騎士候補に囲まれ、慌ただしくも充実した日々を送っていた。
だがアザンクールの戦いでの大敗によって、フランスと彼らの運命は一変する。
パリが陥落し、騎士養成学校も閉鎖され、
すべてを失いお尋ね者の流れ錬金術師となったモンモランシは、
逃亡先の村で不思議な少女ジャンヌと出会う…。

ユリシーズ ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士
公式サイト


今回紹介する「ユリシーズ ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士」は30分枠の百年戦争をモチーフにしたダークファンタジーだ。
冒頭にも述べたし、オープニングをみればすぐに分かると思うが今作は気合は十分で『ダークファンタジー』というジャンルに分類されるぐらいには”いろいろな意味で”重い描写”が多く、手軽に見るのには向いてないガッツリと作り込まれたアニメーション作品と言えるだろう。


今作を語る上で、そして多くの視聴者と同じ様に一話切りしないために、いくつかの視点から分けて本作を見つめ直す必要があると感じた。
それなので「いったい何故、今作の視聴を打ち切る視聴者が後を絶たないのか」という疑問を解決すべくいくつかのキーポイントを持ち出しながら再考察してみたい。

まず、本作は史実もしくはそれにともなう伝承をモチーフにしていて、しかも基本的にはその流れに沿う形をとっているところを挙げる必要があるだろう。
本作に出てくる数多のテコ入れされた美少女キャラクターたちも史実上の登場人物にあてはめられる形の設定で登場するのだが、そもそも現代からしてみれば『暗黒時代』とでも言えよう欧州の中世と可憐な乙女たちがミスマッチだったという問題がある。史実や歴史考察系が好きな視聴者をターゲットにしているならそれらの視聴者から「なぜこんな華奢な少女がイギリス軍を打ち倒せるんだ」と最序盤からツッコミと共に詰めの甘い凡々作として視聴切りされてしまうのも致し方ないことだ。


これがファンタジー作品であると全面に押し出してあるならともかく、百年戦争を持ち出してあたかも歴史好きをターゲットにした少し硬派なアニメなのかと思えば非現実的な力のバランスを持ち出して、「いったい誰のためのなんのアニメなんだ」と視聴者の頭の上に?マークを大量に浮かび上がらせてしまうのだ。

そしてテーマとなるのは100年戦争で、故に長期化する戦争を描かれるのだが登場人物の寿命は短い。特にアニメの主人公やヒロインの賞味期限はその見た目や描きたい年齢層に制限があるが故に遥かに短く、第一話から戦うには稚すぎる主人公やヒロイン達を適正年齢まで主人公がハマった錬金術は時間の感覚を狂わせるという設定のもとでの「時間ワープ」で成長させるという超展開を序盤からブチ込んでくる。


そして、話数を重ねるにつれて、中途半端に歴史要素を混ぜ込んで暗い宮中の権力争いや謀略を匂わせて暗い雰囲気を出しておきながら(可憐なキャラクターデザインはかなり浮いて見えてしまっている)急にファンタジー要素の賢者の石による覚醒や不死、超能力の発言に終盤には宗教観ごちゃまぜで「中世を舞台にしてその歴史をなぞるストーリーはなんだったのか」と思わせる『神との戦い』まで行うことでもはやテーマとした「100年戦争」とはなんだったのかとやはり歴史好きやファン層からは絶対に不評を買うであろう展開を作り上げておきながらファンタジー好きからしたら重すぎる展開を作り上げるという、いいとこ取りをしようとしたのだろうがそれが下手に出てなんの成果も得られない得体の知れないなにかを作り出してしまったという結果を導きだしてしまった作品を見させられることとなる。


そんな混沌を超えた「何か」に加えられるのは美少女アニメにはお約束のサービスカット要素だ。バーサークロリ少女の登場と熱いキスや、すでに物語の開始とともに約束され、とくに理由も述べられない主人公を中心としたハーレム状態。そしてそんなヒロイン枠の意図や過去のやり取りを無視してロリ少女との愛に芽生える主人公などもう視聴していていったい何がしたかったんだ!!と叫びたくなるほどごちゃごちゃな関係性はおそらく関係図を書いても納得できるはずもなく、これも同じく無計画に「コレ面白いんじゃね」と「これはお約束」を組み合わせた結果出来上がってしまった得体の知れないなにかを見ることとなるだろう。




そしてそんな誰得サービス要素はそもそも中世の世界観と相反するし歴史ファンやダークファンタジー好きが喜ぶような要素とはかけはなれているので極々一部のクリティカルヒットのファン層には受けるかもしれないが商業作品として、そしてアニメとしては大失敗なのではないかと言わざるを得ない結果にたどり着いてしまっているのだ。

とはいえ、作画や瞬間ごとの演出や描写には一定のクオリティが約束されていて、そもそもの作画や演技などの点でもホラーレベルのクリオネ程ひどいものかというとそういうわけでもなく、全国に存在するロリっ子ファンからすれば人気間違いなしのキャラデザの大天使ジャンヌちゃんもいるので見どころがないわけではない。
厚いベーゼ(口づけ)シーンやロリっ子が騎士の衣装をまとって皆を鼓舞するシーンなんかは思わず頭をなでてあげたくなるような上級視聴者も数多く存在するのではないだろうか。



だが、ここにも謎の歴史へのこだわりが影を落とす。
この大天使ジャンヌちゃんはそもそも戦争に参加した経緯が「完全にファンタジー要素の」錬金術と賢者の石の力によるものにもかかわらず、結局は歴史をなぞって最終的には史実に沿って火刑にかけられるという未来予言がなされて、ファンタジーかつ、歴史的にはそもそもブルゴーニュ公国にとらわれるはずなのに結局主人公側に姫側がなびいている状況でも絶対的決定論によって最終的には悲劇が宿命付けられてしまっている描写がされているのだ。そして大天使ジャンヌちゃん自身も主人公もそれに抗うつもりはない様に感じる。
作者もしくは演出サイドからしたらこの悲劇要素に「ダークファンタジー」要素を見出しているのかもしれないが正直言ってこれは矛盾だらけの蛇足に感じているし唯一の希望であるロリっ子ジャンヌちゃんファンからの支持という一本の糸ですら自己満足のために切り離してしまっているようにしか感じなかった。


そして、それでも今作に希望を抱いていた私に絶望を与えたトドメの一撃として突然あらわれる宇宙船要素がある。
普通に神を持ち合いに出すならその雷鎚もファンタジー系のものでよかった思うのだがなぜか急に宇宙に謎の「宇宙船」が出現してそこからビームが発射される。もうここまできたら「ダークファンタジー」でもなんでもなくSFアニメだ。
歴史をなぞった戦記ものアニメなのか、はたしてファンタジーなのか、萌豚向けの癒やしアニメなのかSFアニメなのか?振り回され続けた私はここで乾いた笑いと共に今作に救いなんてないことを確認させられたのだった。


全体的に振り返ってみると、最初の数話と最後の数話を除いてほとんど全部じゃねえか)納得のいかないストーリーでも義務感で見ることのできるステータスを高めに配分している訓練された視聴者なら全然見れないことのない作品であり、宇宙船のくだりなど思わず笑ってしまう部分もあるがそれはまだ「笑えるだけ」マシと考えればアニメに必要な「シンプル」さを実感するのにちょうど良いアニメと言えるのではないかと私は考えている。

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