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2017年10月11日水曜日

9分間耐久レースの幕開けだ!

これを最終話まで視聴した猛者は数少ないかもしれない。そんなあらゆる意味であらゆる層に対して難易度が高い逸品を皆様にも紹介させて頂きたいとおもいます。


ずっとイジメられっ子のレッテルを貼られていた実(ミノリ)。
そんな彼女の笑顔を見たいと願う方(タカシ)と杏子(キョウコ)は、ある雨の日の午後、思い切って声をかける。
けれど結局、本当の笑顔は見られないまま、彼女は体調を崩し学校に来なくなってしまう。
それから二ヶ月…方と杏子の元へ一通の不思議なメールが届いた。
送り主の名前もなく返信すら出来ないそのメールは隣町の夏祭りを知らせるものだった。

クリオネの灯り(公式サイト


まず、今作は忍耐力を図るテストとしては上から数える程の名作と言えるだろう。何が好きでこのアニメをみているのか?そんな問いかけを今作は何度もしてくる。そして棒読みの演技や怪しさを増す作画に慣れたとしても謎のストーリーと演出があなたをさらに揺さぶってくるだろう。それを耐えた先にあるものは救いをもって終わらせたいのか,何をテーマにしたいのか,いったい何が起きてるんです!?そんな結末だ。これだけは確かに言える…


私達に救いは無い。


ヒロインである実ちゃんは病弱でいじめられてる設定。あらすじでは「イジメられっ子のレッテルを貼られていた実」とされているがレッテルも何も普通にいじめられている。実ちゃんにも救いはない。
実ちゃんがイジメられるきっかけには、いちいちクラスで飼育している金魚の水槽のエアレーションが外れるところから始まる。
なんとなく「いのち」もテーマに盛り込みたい、そして実ちゃんが死ぬという結末に向かってバシバシフラグを立てて行こうという強い意図がぐんぐん迫ってくるのを感じ取ることが出来た。中盤以降に登場する七海ちゃんも
「金魚だって…ポンプひとつで死んじゃうんだから!」
としっかり回収してく。
たぶんあのレベルの水槽と金魚だったらポンプ一つでは死なないだろうが…

物語の前半部分では水族館へ遊びに行くというところで,ここでクリオネが登場する。ここでクリオネの説明を棒読みで読み上げていくあたりで儚さとかそういったところが露骨に強調された演出によってああ死ぬんだなということが良く分かる。

クリオネの灯りというタイトルと水族館での件から最序盤から実ちゃんが死にそうということは誰にでもわかる親切設計になっていて死ぬキャラがよく分からない理由でよく分からないイジメを受け続けるのを「棒読みの演技や怪しさを増す作画」と共に淡々と見させられる最序盤パートではあなたの良心が試されるかもしれない。


水族館パートを終えると全体としては折り返し地点となり,実ちゃんは学校へ来なくなる。はっきりと不登校なのか入院なのかは明らかにはされず(視聴者にはモロバレだが…)途方に暮れるタカシくんとキョウコちゃんの二人だがそんな二人に差出人が不明の謎のメールが届く。「夏祭りへ行こう!」
それを実ちゃんからのものだと思った二人は夏祭りに向かう。

二人が夏祭りの会場へ向かうとそこに実ちゃんがいた。そして合流した三人は祭りを満喫する。
だがそこに邪魔が入ってしまう。実ちゃんをイジメていたクラスメイトと鉢合わせしてしまったのだ。
ここでおそらく今世紀最大の謎演出が入る。たこ焼きシスターズはちょっと可愛かったかったのでまだ良いがたこ焼きラッパーズが登場するのだ。
真面目なテーマを取り扱った作品なのかと思いきや突然流れをぶった切って寒いラップが繰り広げられる。制作陣はもうやけくそ気味なのだろうか。

そして祭りの会場を離れた三人は日が沈んだ後の灯台で色々なことを話す。
そして打ち解けてより仲良くなった三人で綺麗な夜景を見ていると雨が降ってきたので近くで雨宿りをしていたら3人共に寝てしまった。そんな終わり方で物語は幕を閉じる。


実際に見てみると数々の試練が待ち受けていて大変な道のりだったが以外と最終回で綺麗かつスッキリ終わらせてきたのは評価したいところだろう。


…最終回じゃなかった。


ここからは超展開の連続だ。タカシとキョウコの二人が目を覚ますと実ちゃんはいない。残されたのは携帯電話だけ。
不安になった二人は辺りを探し始めるそんな二人になんだかんだで周りのたい焼きシスターズやたこ焼きラッパーズも合流して皆で実ちゃんを探すがやはりいない。そんなとき,誰のものでもない謎の電話の着信音が鳴り響く…

そう、これはホラーアニメだったのだ。

皆が海岸に戻ると学校からタカシが連絡を受けていた。じつは実ちゃんは遠い所にある病院で亡くなっていたのだ。じゃあさっきまで祭りではなしていた実ちゃんは?幽霊なの?

そう、これはホラーアニメだったのである。

そして実ちゃん視点での回想シーンで一話が費やされる。実ちゃんは新しい病院の売店でクリオネの携帯用ストラップを見つけたらしいが病院で医療用って書かれた赤い色のストラップ以外が売られているのを見たことは無い。
実ちゃんがどう過ごしていたのかが明らかにされるのと同時に謎の伏線が貼られる。タカシとキョウコと小さな女の子が三人で幸せそうに過ごしてる夢を見たというのだ。

そして最終話ではタカシとキョウコのその後の場面に戻る。登場人物それぞれが実ちゃんに対して、いままでの行いや出来なかったことを後悔する。
悲しみに暮れる二人、すると突然,世界が冬景色に包まれて実ちゃんが目の前に現れる,そしてあるはずのない実ちゃんの姿が見える。
そして二人、いや三人は新たな決意をもって声を合わせて言うのだ。

「ここにいるんだよいつも三人で」



最終話の件は良く分からなかっただろう。実は私も良く分からなかった。
後半,夏祭りが終わってから結局はっきりと回収されなかった伏線の数々や中途半端な救い要素など,とにかくいろいろなものが宙に浮いたまま結末を迎えてる。
とにかく後半からスピードアップし過ぎて要素を詰め込めるだけ詰め込んで、演出と音楽で感動系アニメな雰囲気を無理やり醸し出したところで視聴者の大半は置き去りにされていてしまって最後の「ここにいるんだよいつも三人で」も全然心に届かなかっただろう。

今作を最後まで見て分かったことは、このアニメは何のジャンルだったのかどんな内容で何が伝わったのか分からず、一体私達は何を見ていたのか。それすら思い出せない不思議な体験を提供してくれるアニメだったということだろう。
これはやはり…

ある意味私達にとってのホラーアニメだった


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