ジェットコースターは好きですか?ゆっくりと勾配を登り、そして高速で駆け下りる。あっという間の出来事に人々はスリルを感じます。
ではアニメーションにおいてジェットコースターのような緩急をいきなりつけてきたらどうなるのか…しっかり掴まっていてくださいね。数多くの人が振り落とされてしまった隠れた迷作?の紹介です。
あるところに一人の旅人がいました。彼女の名はイレイナ。
「構わないでください。私、旅人なものですから。
魔女の旅々(公式サイト)
今回紹介する「魔女の旅々」はライトノベル原作の30分枠アニメーションだ。ファンタジーな世界で幼い頃に読んだ冒険譚に心奪われた少女がいつか自分も旅に出ることを夢見て、両親から旅に出るなら魔女になれと言われて、そのために魔女を目指し若くして魔女の称号を得るまでに魔法の腕を上げた後に「実際に旅に出る」。そして、その『旅』を描いた作品となっている。
本作の主人公は「《灰の魔女》イレイナ」。イレイナが幼少期に旅に憧れるところから実際に魔女になるまでの導入部に1話まるまる費やされるが後は彼女を中心にその師匠だったりさらにその師匠だったり旅先で出会った友人?だったりを巻き込んで旅先の様々な事件に巻き込まれたり解決したり絶望したりという出来事を描くストーリーとなっている。
その事件それぞれに連続性があることは少なく(続いてギリギリ2話分まで)言い方を変えるとまるでイレイナの旅の物語という童話や短編集を見ている様な気分になる作品構成となっているのだがここで賛否両論の尖った構成が徐々に見え隠れしてくる。
まず、構成だけに的を絞って話すと、めちゃくちゃに分解されてつなぎ合わされたものとなっていて、いきなりイレイナそっくりのイレイナではない人物(母親)の話を何の前置きも無く他の話の間に入れてきておいて(一応雰囲気で察せる程度のヒントはあるのだが)また何事もなくイレイナの旅の話に戻したり、途中で世界線の分岐というキーワードを出して、更に最終話でそれぞれの世界線の分岐から人が集まったような描写をしておきながらそれについて特にふれる事無くその話を終わらせて視聴者を置き去りにして、更にはアニメ作中で触れられなかった原作でその先に登場する人物を「続きは小説で」と言わんばかりにぶち込んでくるものだから「ああ、なんとなくこういうことなんだろうな」という危うい線でしか全体としての展開を追うことが出来ず、先程述べた最終話最終部分についてはもはやアニメ作中だけでは理解できずwikiや原作ネタバレの助けがないと理解できないレベルになっていた。
「いったい今はどの世界線にいるんだ!?」「この話には全体の流れとしてどんな意味があるんだ?」「この話数のイレイナはいったいどのイレイナなんだ?イレイナではないのか?」なんてことがあれば当然作品に対する没入感は下がるので本作におけるマイナスポイントとなってしまっていることは間違いなく残念だ。
更には作品の描写表現のバランスと突然の鬱回の問題が挙げられる。これは好みや割り切り方の問題でもあるのだが(筆者はわりとそこらへんは気にならなかった)。せっかく旅先での人の不条理や愛や憎しみ、人の犯す間違いなどにも触れながらの旅であるし「旅」にふさわしいファンタジーと異国感を醸し出しているのに何故か「日常系」の様なキャラ同士の絡みや演出が入ってくる。まるでなろう系小説の無双ハーレムものの旅パートの様な雰囲気を醸し出しておきながら次の話では思いっきり不条理や鬱展開をもってくる。それも短編集だからとかいろいろと言いようはあるかもしれないがそういった鬱展開などもただ淡々と描かれるだけで、もし情景描写などがあればもっと「味わい深い」余韻の残るもっと良いものになるのにという残念さは拭いきれないし、その直前にほんわかゆる系旅日記みたいなストーリを持ってきてしまっているのでその緩急の差についていけなかったり違和感を感じてしまうのも無理はないのではないだろうか。
ちなみに第九話が一番暗い話になったと思うのだが正直コレに対して他作品の同様な話のときの様になにかを訴えかけられるような気持ちにはならなかったしただただ「はい、これが鬱展開です」と言われて映像が流れているだけのようなものだったのはちょっと残念で物足りなかった。
ここまで言うとなんだ、久しぶりにクソアニメが来たのか?と思われるかもしれないが。イレイナのちょっと独特な性格も含めた彼女の魅力や旅先での出来事に面白さがないわけではなくむしろ面白さや魅力を感じる部分も多い。
具体的には作画やその演出はなかなかなもので特に1話では師匠であるフランさんとの戦闘シーンなどは見どころと言えるし常に絵のクオリティは高い。
それに鼻につくのか嫌われて低評価の要因にされることも多いちょっと傲慢な感じのイレイナの性格も私はけっこう好きでイレイナは惹かれる点が多くある魅力的なキャラクターだと思う。
だがしかし、それだけにそういった魅力を引き出してより「味わい深く見ていて楽しい、楽しかったまた見たい」と思える様になりそうな作品だけにそうでない要因により引き起こされるギャップと消化不良感は凄まじく最後まで視聴を終えた後にはなんとも言えない気持ちになった。
場面を切り抜いたり好きなところをつまみ食いする分には良いだろうし、もしかしたら私の読解力不足でこのアニメの構成や意図を追いきれていなかっただけかもしれない。ぜひともその目で本作の褒められる部分も不評な部分も確かめられては如何だろうか?
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