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2018年6月7日木曜日

声優業界はおかしくておもしろい。

アニメ業界を扱った作品として絶対的基準点となるSHIROBAKO。
そんな伝説を記したSHIROBAKOが遺した功罪。それがなにをもたらすのか…。
今回はそんななにかを見いだせるかもしれない声優のお仕事アニメの登場です!


某月某日、某アニメのパッケージ発売を記念したイベントが都内某所で開催されていた。主演の苑生百花、柴崎万葉、ふたりの人気声優が登壇する華やかなステージを、舞台脇から野心を秘めた瞳で見つめるひとりの共演者がいた。実力も人気もまだまだな駆け出しの声優・烏丸千歳である。野心はあっても、特別に何か努力をするわけでもなく、モブ役ばかりをこなす毎日に漠然とした危機感を感じている――そんな千歳に訪れる転機とは!?

ガーリッシュ ナンバー(公式サイト


まず、初めに言っておこう。オープニングがしゅご~い!!
今作のオープニングムービーはかなり気合が充分で声優のキラキラした部分がよく描かれているのではないだろうか。


それでは本編はどうなのかというとかなり辛い描写となっている。
作者がアニメ業界の厳しい世界を見てきたからなのか、なにか嫌な思いでもしたのか、はたまた偏見なのかはわからないがかなり辛辣で黒く業界を描写している。
作品を最後まで通すとなんとなく良い話っぽく終わるのだがあまりアニメの声優のお仕事について良いイメージを残すことはないだろう。


まず、この部分が今作のマイナスポイントにもなってしまっていると私は感じた。ギャグアニメで笑いを取る方向でブラックな描写をするのならばそれは視聴者から笑って受け入れられるが真面目に淡々と偏って辛辣な描写を続けると、とくにそれが視聴者層が普段から見るアニメの声優の話であるからにしてなおさら見ていて気分の落ち込むものになってしまうからだ。
やはりお仕事ネタのアニメは厳しいところはあるけれどもやりがいがあるとかそういうところを容易して希望を視聴者に遺したほうが伸びるのではないだろうか。


作中でさらに制作される作品の方はもう「万策尽きた」クソアニメとなってしまっている。
そして作中に私のようなクソアニメハンターが登場してその作品をこう評している。

――
なんやこのアニメ。こわい……
――

やはりクソアニメ、ホラーアニメ化現象は存在した!!

だが、安心して欲しい。今作自体のクオリティはかなり高いと思う
なぜなら今作のキャラデザおよび作画は優秀な部類に入ると思う、ライブシーンやキャラクターの仕草などけっこうヌルヌル動くし、イベントシーンでのライブステージなど声優のキラキラした部分が際立つ気合の入ったシーンをいくつか見ることができる。


だがその一方でそれを打ち消してしまいかねない欠点も存在する。
それは仕事アニメなのに仕事に焦点を当てずに、あまり中身のない心情描写や設定に力を入れている回が多い事だ。それらを引っ張る本作はかなり間延びしている様に感じる。特に中盤あたりでは視聴時間が長く感じてしまうという「クソアニメ化」現象に片足突っ込んでいるような状況に置かれてしまう視聴者もいることだろう。

作中でキャラクター達が語る辛辣なセリフを引用するなら
――
何がしたいアニメなのか見えてこない作品
――
と言える。

キャラクター設定はかなり変人というかクセの強いものが揃っていて、ここも人によって好き嫌いが出るだろう。
ここでさらに評価ポイントとしてマイナスに触れがちなのは(人によってはここが高評価になる人もいるだろうが)主人公がかなりのクズで最終的にはちょっとは成長するのだが成長速度が遅すぎて見ててイライラしてしまう人も多いのではないだろうか。
他は良いのだがメインヒロインの千歳がクズ過ぎて魅力が見えてこないというところがけっこうある。
だが最後まで見れば、それでも負けず知らずに自分への自信、そして愛が彼女を役者たらしめている。…かもしれない。



作中では主人公が主役のうちの一人として抜擢されるアニメがかなりのクソアニメとなってしまうのだが、そのアニメのプロデューサーがもうSHIROBAKOでいうところの高梨くんタイプとなっていて必要以上に現場を荒らす。最後には少し成長してみたいなところは見せるのだが正直、アニメの展開を荒らしすぎだしやりすぎで今作のテンポを乱す存在でしかなかったと思う。
それでもかなり高梨くんなキャラを入れ込んでくるあたり、今作の制作においてもレジェンドであるSHIROBAKOが影響をせざるをえなかったということを表しているのかもしれない。

後から考えてみると最初にキャラクターの性格を黒く描いていたのが声優という視聴者層からしたら距離感を感じてしまうような存在を近く感じさせてくれる要素たり得ていたのかもしれない。

全体を通して振り返ってみても終盤の謎マネージャーの登場と良い、割と雑な展開が続くし一応はまとまりをもって「イイハナシダナー」っぽくは終わるのだがどうも話の一貫性も意図も伝わってこない構成となってしまっていた。
中盤のダレるところの後には一応貯めたフラグを消費しつついきなり主人公が成長する場面に繋がって行く貯めて放出するタイプのアニメとなっているのだが、主人公をクズにしすぎて主人公が落ち込むところにも同情しにくいし、全体を通してマイルドな構成なのでなんとなくしっくりこない。


  • クズすぎるヒロイン
  • テンポの悪さ
  • 設定が軽い


これらの三要素は今作の足をかなり引っ張ってしまったように感じる。

その一方でキャラ設定やデザインはかなり良いだけにもったいないなと感じる作品だった。
キャラで見てなにか気に入ったキャラに感情移入できる人やかなりクズな主人公にも耐性のある人になら、魅力的なキャラデザやキャラクター性に、一応のまとまりをもってハッピーエンド?な終わり方とおすすめできる一方でクズな主人公がだらだらと展開を引っ張ったり全体を通してもいまいちぱっとしない展開が気に入らない人にとってはあまりおすすめし難い作品となっている。
ただそれでも声優のお仕事を扱ったアニメとしてはなかなか数が少ないなかのひとつなので気になった人は覚悟を決めて視聴してみては如何だろうか。



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