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2018年3月11日日曜日

アニメにおけるラストリベリオン作品。

レベルを上げて物理で殴ればいい」そんなゲームがありましたね。今回紹介する作品は新海誠監督の作品としては『ほしのこえ』に続いて2作目の視聴であの大ヒットアニメ『君の名は。』の前作にあたる劇場版作品だそうです。
全体的にそういう傾向があるのかもしれませんが情景描写全振りで他のすべてを圧倒して行く様なそんな作品の紹介です。


靴職人を目指す高校生・タカオは、雨の朝は学校をさぼり、日本庭園で靴のスケッチを描いている。
そこで出会った、謎めいた年上の女性・ユキノ。やがて二人は約束もないまま雨の日だけの逢瀬を重ねるようになり、心を通わせていくが、梅雨は明けようとしていた...。

言の葉の庭(公式サイト


今作を紹介する上でいくつかのキーワードを挙げたい。

  • 万葉集

の3つだ。それぞれは作中で特に強調されて描写されているのではないだろうか。

○万葉集○


『雷神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ』

『雷神の 少し響みて 降らずとも われは留まむ し留めば』

作中に登場する恋の歌で雨で相手がずっと留まってくれれば良いのにという願いに雨が降らずとも君が求めてくれるならば側に居ようという返しの歌らしい。

なんにせよ恋の歌で天候までに頼って相手を引き止めたいという願いとそれに対して天候にも関わらずあなたが望むなら側に居ましょうというなんともリア充爆発しろな和歌なのだが主人公のタカオと相手のユキノの関係もそんな最初は表には出さないけれども互いに想いを寄せて行き、淡い恋心を重ねて行くという展開で今作を象徴するし、今作の展開や情景をよく表しているピッタリな歌を見つけたなと感じた。
果たして先に歌を見てストーリーを考えたのか、ストーリーを書き終えてからそれに合う和歌を探したのかちょっと気になる所ではある。

○雨○


万葉集の項目の所でも触れられているが今作では『雨』がキーワードになっている。主人公は雨の日は学校の1時限目をサボって新宿御苑の東屋で靴造りのデザインをする。そんなタカオがいつも通りに東屋へ向かうと先客のユキノがいて…
という話なのだがそれから二人が合う機会は当然タカオがサボる雨の日に限定される訳で二人はなんとなくゆっくりと静かに惹かれ合うのだがその機会も雨の日だけになっていてそのうち二人がお互いを恋しく思っても梅雨が過ぎて雨の日が経ると少なくなってしまい。という展開でとにかく『雨』がストーリー上でひとつのキーワードとなっているのだ。
それだけに雨の描写が美しく、冒頭でも述べた通りに私が今作を情景極振りの作品と位置づける所以にもなっている。

○靴○


続いて靴なのだが靴というよりかはそれから少し発展してそれぞれの登場人物がただ恋路に耽るのではなく支え合いながら自らの『足』で立ち上がって歩みだすという2つ目のテーマにも注目して欲しい。
主人公のタカオはその家庭環境から歳の割には大人びているというかすこし落ち着きすぎているところがあって靴職人という夢があってそのために一生懸命努力はしているがそのいっぽうで将来への不安だったりなにか自分に足りないと感じて立ち止まっていた。
相手のユキノは元々は普通にやっていたのだがまあいろいろとあって元いた所へ戻ることもできず一人で新たに歩みだす力も失ってしまっていた。まあ簡単に言えば病んでいたのだ。

そんな二人が少しずつだが出会って交わって行く過程で二人とも少しずつ見失っていた自分の力を取り戻し、最後にはそれぞれの道を歩みだす。
この要素はただの綺麗な恋愛ものではない作品に見せるものだし情感に訴えかけるテーマなので今作の魅力のうちの一つではないかと思っている。

まとめ


とにかく情景の描写に特化していて台詞や説明も多くなく『察する』アニメだと感じた。そういうところにもどかしさを感じるならば今作はオススメできない。
逆に設定や説明が溢れかえっている今のアニメに疲れてしまっている人にはオススメできる。

そして今作では恋路とそれぞれが自立して歩みだすという2つの相反するテーマから最後は綺麗なハッピーエンドにはならないが、それを匂わせる終わらせ方で観る人の想像力によって捉え方も変えられるし結末を考えるのもまた楽しいと感じさせるような作品なのではないだろうか。

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