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2018年8月8日水曜日

安らかに眠れ…

艦これ。今ではその熱もだいぶ冷めてアズールレーンなる競合ゲームのヒットも受けて大分勢いを失ったゲームですが、このゲームがサービス開始される前、私はここまで今作にこれまでの可能性があるとは思いませんでした。
ということでゲーム原作にして圧倒的かつ熱狂的な人気を誇る艦これというコンテンツのアニメ化作品の紹介です。


艦隊これくしょん -艦これ-(公式サイト


今回紹介する『艦隊これくしょん -艦これ-』ゲーム原作の30分枠アニメだ。
冒頭でも述べた通り、そもそもゲームをプレイするために運営側のキャパシティの拡張を待たなくてはいけない順番待ちが発生してしまう状況でさらに新規着任枠が開放されてもそれもすぐに埋まってしまうというかなりの流行りを見せていたゲームのアニメ化ということ、そしてもともとのゲームは立ち絵での表現がほとんどでそんなゲームに登場する艦むす(キャラクター)達をどうアニメで動かしてくるのかでかなり期待を集めたアニメでもあった。

ストーリーとしてはステータスから見てもキャラクターデザインからみても主人公と呼ぶには地味な『吹雪』が今作の主人公として選出されていて(もともとのゲームのロード画面でも主人公ポジなので仕方ないね。)そんな吹雪が海の安全を脅かす敵である「深海棲艦」と戦う鎮守府に着任してから成長を遂げていくつかの任務を達成するまでを描いた作品となっている。


もともと艦娘と言われている通り、今作に登場する擬人化されたアニメ化キャラクターはすべて女性キャラクターとなっている。まあ、海軍の歴史をもちその手の話題のスタンダードとなる海のあちら側では船のことを「She」(彼女)と呼ぶくらいだし特に違和感はないし。むしろ女の子しかいないということで百合の可能性や波動を感じることもできるので大歓迎だ。
唯一の男性?キャラとして提督の存在が挙げられるが提督は登場人物としてストーリーには絡んでいるものの一度もその存在を描かれることなく最終回を迎えている。おそらくは幾多にも存在するすべての提督たちにとって今作で動く艦娘達に親近感をもってほしいとの配慮からのことだろう。この采配は良く働いたと思う。基本的に艦これプレイヤーはある”事件”を除いては「セントウガー」族以外は高評価を今作に与えるのではないだろうか。


如月ショック


如月ショックとは、艦これアニメ第3話にて起きた出来事と、その反響・波紋の総称である。
ということで艦これはアニメにおいて視聴を決定するかどうかの分かれ道とも呼ばれひとまずファン層を定着させるための1つの関門である3話目にして大きなやらかしをしてしまった。
3話に艦娘を轟沈させる(人間で言うところの死亡させる)という過ちを犯してしまったのである。

艦これという作品はいろいろなしがらみに縛られている作品でもあるといえるだろう。
私から大きなものとして3つ挙げるならば
  • 史実
  • ゲーム準拠のシステム
  • コミュニティ
が挙げられる。

まず、艦これは史実で存在していた、もしくは存在し得た艦船をモチーフにしたキャラクターを扱っている。そしてそれらのキャラクターの設定や発言にはもともとの歴史上の出来事やそれぞれの船のエピソードなどに基づくものがあり、艦これというコンテンツ自体が史実とは切って切り離せないものとなっている。
そうなってくると当然のことながらことごとく艦艇を失った日本の船をモチーフにした艦娘達は同じ歴史をたどるシナリオや設定をそのままたどると轟沈、すなわち死んでしまう定めにあるのだ。

続いて、その轟沈というものが艦これのユニークなゲームシステムのうちの一つとして実際に存在しているということが挙げられる。
この記事を読んでいる人のなかに提督がいるならばうっかりのミス、もしくはブラック鎮守府的な周回の過程で艦娘を轟沈させてしまったという人も少なからずとも存在するのではないだろうか。
特に最初期では轟沈の仕組みがよく分かっていなかったこともあり多数の艦娘が鎮守府から去ってしまっていたことだろう。

以上の事柄から歴史をなぞったストーリーでキャラとの整合性をもたせつつ、ゲームプレイのあるあるも入れるという意味においては「轟沈」という要素を盛り込むということは”完全に”無しではないと言えるだろう。
実際に如月ショック当初、ほとんどの視聴者が今作を批判するなかで「轟沈」を敢えてストーリーに取り入れたことを評価する少数派も存在した。

だが、ここで忘れ去られてしまっていた要素が登場する。それは艦これを支える「コミュニティ」の存在だ。
そもそも大元の「艦これ」自体がコミュニティの成熟と発展がなければ流行らなかったというほどに艦これにおけるコミュニティの存在感と意義は大きいものがある。
そしてそれらのコミュニティで交流する大多数のプレイヤーはそれぞれの艦娘に愛着をもって接していて「轟沈なんてもってのほか」ということでなるべく轟沈を避けるためにあと一歩でクリアでも”勇気ある撤退”を選ぶものも多かった。
轟沈は史実上の整合性からもゲームシステム的にもアニメに取り入れられても有りかもしれない要素だが、より大きく根本的にコンテンツを支えるコミュニティが「NO!」を出しているものなのにも関わらず如月を轟沈させてしまったアニメ「艦これ」の制作陣はかなり手痛いミスを犯したと言わざるを得ないだろう。

そんな訳で「轟沈なんてありえない」という前提のもとでそれぞれの提督がそれぞれのお気に入りの艦娘たちが活躍したり日常を過ごしたりするのを見て楽しめると思っていたところ、しかも最初の山場である第三話において艦娘が轟沈してしまったという事実は大きな衝撃であったし到底受け入れ難いものになってしまったのであある。

このショックから立ち直って視聴を継続しているひともいたがその一方で艦娘を愛する提督にとって今作はこの事件ですべての評価がマイナスに振り切ってクソを通り越したゴミアニメ扱いを受けることになってしまったのだ。


艦これ=如月ショック=ゴミアニメという印象が強く残ってしまってはいるが全体を通して振り返ってみるとカレー大会など艦娘の日常生活を描いたテコ入れ回も存在しているし(特に第六駆逐隊をこよなく愛するロリコン提督はご満悦の様子)全体として作画などアニメとしてのクオリティは終始維持されていた様に感じるしひとつの作品の世界観としての提示とは言えどいままで立ち絵だけだった艦これの世界を広げるものとして今作が果たした役割は大きいものがあるのではないだろうか。

艦これをプレイする提督ならばぜひともその評判や先入観に囚われずに例の第三話も「あくまで世界観のうちのひとつ」として割り切ることで躍動する艦娘たちを是非とも見届けてあげて欲しいと願う。
一方で艦これというコンテンツを知らない人からすると艦これの事前知識なしでは登場するキャラクターも多く背景を知らなければただの癖の強いキャラクターの連続登場と捉えられるようなシーンも多くあまり楽しめないかもしれないので是非とも視聴前に艦これのプレイもしくはそれぞれの艦娘に対する予習をオススメしたい。

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